眼医器協ニュースVol.87
学会を終えて
熊本大学大学院生命科学研究部眼科学講座
教授 井上俊洋
2019年9月6日(金曜日)~8日(日曜日)の3日間、ホテル日航熊本において、谷原秀信病院長を会長とし、第30回日本緑内障学会を開催させていただきました。約1,500名の参加者をお迎えし、盛会のうちに終了することができました。事務局長として、支えていただきました関係者の皆様方に厚く御礼申し上げます。本学会のテーマは「緑内障の謎に対するセンス・オブ・ワンダー」でした。大人になると、子供が自然に触れたときに受ける、新鮮な驚き、純粋な好奇心を忘れてしまいがちです。いまだブラックボックスの多い緑内障病態を解き明かすためには、子供のような驚きや好奇心が必要ではないかと考え、このテーマといたしました。
30回という節目を迎えた本学会の特別企画として、緑内障学会理事長である山本哲也先生を演者にお迎えし、「日本緑内障学会発足の30年の歩みと今後」と題してご講演いただきました。日本緑内障学会が辿った足跡を、貴重な写真を交えながらお話していただきました。また、学術的な貢献、啓発活動、国際交流から若手研究者に対するメッセージまで、幅広くご講演いただき、今後の緑内障学会の発展を目指して、各会員のモチベーションが上がる内容となったのではないかと思います。須田記念講演は広島大学、木内良明先生に担当していただきました。緑内障発症・進行に対する原子爆弾の影響、および食事や環境要因との関係について、詳細かつ大胆にお話いただきました。招待講演のDuke大学、P. Vasantha Rao先生には、ライフワークとも言える房水流出路におけるRho-ROCKシグナルの分子メカニズムについてお話いただきました。特別講演として、お一人は安東由喜雄先生に来ていただきました。アミロイドーシス、特に家族性アミロイドポリニューロパチーに伴う眼疾患を紹介し、その克服が強く望まれていることを情熱的にご講演いただきました。特別公演のもうお一方は、山下俊英先生に、中枢神経の保護と再生の治療戦略について、お話いただきました。眼科領域の神経保護・再生治療に触れながら、脊髄疾患の神経保護治療が治験段階に入っているという、眼科医も将来に希望を見出せるようなご講演でした。Japan-Asia Symposiumでは、韓国よりChangwon Kee先生、Chan Kee Park先生をお迎えし、山本哲也先生、杉山和久先生、相原一先生とともに、乳頭出血について骨太な議論を交わしていただきました。
各シンポジウムにつきましては紙面の都合で細かくご紹介できませんが、いずれも充実した内容で、活発な議論が行われました。ポスター・器械展示は、会場の都合によりやや手狭の印象はありましたが、各講演会場と近接していたこともあり、途切れることなく来場者に来ていただいたと伺っています。日本眼科医療機器協会の皆様には大変お世話になりましたこと、厚く御礼申し上げます。