眼医器協ニュースVol.106
学会を終えて
第34回日本緑内障学会 学会長
東京慈恵会医科大学 眼科学講座
主任教授 中野 匡
第三十四回日本緑内障学会学術集会を令和五年九月八日から十日にかけて虎ノ門ヒルズフォーラムと慈恵医大の講堂で開催させていただきました。
本大会は「緑内障の精密医療-PRECISION MEDICINE-」をテーマとしました。同テーマには、多因子疾患であり複雑な病態機序を持つ緑内障を層別化し、より適切な予防・診断・治療を行うという次世代医療への前進の契機になればという思いをこめました。
本大会は現地開催にライブ配信、オンデマンド配信を組み合わせたハイブリッド形式で行いました。学会プログラム委員の先生方のご尽力を頂き、特別企画・学会長企画をはじめとして大変魅力あるプログラムを作って頂きました。これまで開催された緑内障学会は、かなりの確率で台風とご縁がある学会でしたが、本学会も初日は台風直撃の悪天候となりました。幸い2日目以後は天気に恵まれ、3日間とも各セッションに溢れるほど多数の聴講者に詰めかけていただきました。須田記念講演では中村誠教授(神戸大)が「緑内障性視神経症は第4の糖尿病か!?」という刺激的な提言を、特別講演では加藤規弘先生 (国立国際医療研究センター)が「生活習慣病のprecision medicine時代の幕開け」として本大会のテーマを俯瞰したお話を、そして招待講演ではJeffrey Goldberg教授 (スタンフォード大学)が「Moving neuroprotection from lab to clinic」として神経保護など緑内障の先進的治療などをご紹介いただきました。学会長特別企画として若手医師からの演題を集めたコンペティションを催し、教育講演の一部を会期前にオンデマンド配信して新規の参加者を呼び込む企画などを行いました。また、仲泊聡先生によるロービジョンお悩み相談室にも多くの参加者に来ていただきました。さらに、Global Symposiumでは米国、英国、中国、マレーシア各国から著明なゲストが参加し、国際色豊かな講演会となりました。こうして計三七題のシンポジウムと三六題の教育講演、一五〇題の一般演題が発表されましたが、モデル動物等を用いた基礎的研究、分子疫学・コホート研究のほか、画像診断、薬物治療、外科治療など、緑内障の病態に即した診療手法の改良・開発、未来型医療(すなわちprecision medicine)を目指して、各セッションは熱のこもった議論が展開されました。
ホスピタリティーや広報にも趣向を凝らし、会場となった森ビルのご協力により、虎ノ門ヒルズのキャラクターである「トラのもん」がポスターや抄録集の表紙に登場して本大会を盛り上げ、ティータイムセミナーでは虎ノ門界隈の有名スイーツの詰め合わせが提供されて本大会を華やかに彩ることができました。
日本眼科医療機器協会ならびに医療機器メーカーの皆さまにご尽力いただいたお陰で、限られたスペースにもかかわらず、多くの方々に来ていただき、和やかな雰囲気のなかで情報交換の場所をご提供いただきました。本大会を成功裡に終えることができましたこと、改めてご協力頂いた皆様に心より感謝申し上げます。