眼医器協ニュースVol.95
何でも知っとコーナー
続 健市
素晴らしき世界
地球の温暖化は世界中に自然災害をもたらし生態系に悪影響を及ぼすとされる。人間活動で排出される二酸化炭素が地球の上空で温室効果ガスとなり気温上昇を引き起こすことを60年ほど前に予測・警告した人がいました。地球科学者として初のノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎さん90歳です。今やどこを向いても気候変動の文字が躍り、世界の国々がSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)、すなわち2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標(17のゴールと169のターゲットで構成)に取り組んでいる。そのゴール13に<気候変動に具体的な対策を>とあり、そこでのターゲットのひとつに<気候関連災害や自然災害に対する強靭性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する>があります。1960年代に渡米し、アメリカの国立気象局で使い放題のコンピューターを駆使し、温暖化問題に取り組んだ真鍋さんの「大気海洋結合モデル」はこの素晴らしい地球を温暖化から守る救世主の技、「大気と海洋の呼吸」なのだ。あのー、すみません...
一方、1960年代後半、ジャズトランぺット奏者でありシンガーでもあるルイ・アームストロング(愛称:サッチモ)が歌う「この素晴らしき世界」を真鍋さんが聴いたかどうかはさておき、当時のアメリカは泥沼化するベトナム戦争、人種差別、ケネディー大統領やキング牧師の暗殺、さらには貧困や環境汚染でとても素晴らしき世界といえたかどうか。しかし彼は太くて低いダミ声で ”What a wonderful world” と情感たっぷりに歌い上げます。
♪ 私には見える 生い茂る緑の木々 咲き誇る赤いバラ なんて素晴らしい
私には見える 青空に浮かぶ白い雲 祝福された昼の輝き 神聖な夜の静寂 なんて素晴らしい
七色の虹が とても綺麗に空に そして行き交う人々の顔にも
私には見える 握手する仲間たち 「ごきげんよう」「愛してる」って なんて素晴らしい
私には聞こえる 赤ん坊たちの泣き声 その無限の可能性 なんて素晴らしい
そこで 私は思うんだ なんて素晴らしい世界だと ♪
(拙意訳by筆者)
悪くしているのは人間であって、世界は悪くない。多様性を認め合い、愛し合えば調和と平和がもたらされる。希望に満ちたこの素晴らしき世界を子々孫々に残そうと訴えます。東京パラリンピック2020の閉会式でこの曲がフィナーレで流れ国立競技場を湧かせました。50年たっても色あせない名曲を残し、1971年に69歳で生涯を閉じても彼の思想はSDGsのゴールに脈々とさりげなく引き継がれている気がする。間違いない!!
折しもCOP26(国連の気象変動対策会議)が10月31日から英国のグラスゴーで開催されるにあたり「温室効果ガス削減目標」や「地球温暖化対策計画」が10月22日に閣議決定されました。まさに時間との競争です。真鍋さんの『地球愛』からくる研究(好奇心)とサッチモの『世界愛』からくる歌(情熱)は共に人々の幸せを願うものであり、SDGsの基本理念である「誰も置き去りにしない」”Leave no one behind”を具現化するものだと思うのは...私だけ⁈
令和3年10月(記)