眼医器協ニュースVol.89
学会を終えて
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
眼科・視覚科学教室
教授 北岡 隆
第58回日本網膜硝子体学会を無事終了することができました。
最近の網膜硝子体学会は参加者数が増え、大きな会場が必要となってきており、長崎という地方で開催することは難しいのではないかと危惧しておりましたが、予想を超えるたくさんの参加をいただけたのは皆様のご協力のおかげで、心より感謝申し上げます。
会場は長崎ブリックホールをメイン会場といたしましたが、講演会場と器械展示会場が隣り合わせで器械展示会場にも多くの皆様にご来場いただけました。
成功裏に終えることができた本学会を概観したいと思います。
まず第22回盛賞受賞講演は大阪医大の池田恒彦教授に「黄斑疾患と神経新生」というタイトルでお話しいただきました。その黎明期から網膜硝子体手術に取り組んで来られたSurgeonである池田教授は、Physician-Scientistであり、臨床で得られた疑問をテーマに研究を続けてこられました。中心窩に未分化な細胞が存在するという観点から夢のある素晴らしい講演をしていただきました。
招待講演はパリ大学のRamin Tadayoni教授に「Time to move beyond Diabetic Retinopathy Severity Scale」というタイトルでOCT時代の新しい糖尿病網膜症のグレーディングについてのお話をいただきました。質疑応答でもたくさんの方からの活発な熱い討論がありました。また同日の手術関連のシンポジウムでもTadayoni教授に参加いただきました。
田野Young Investigator’s Award は京都大学の村岡勇貴先生が「リアルタイムイメージングによる網膜循環の形態的・機能的評価と病態理解」で、九州大学の石川桂二郎先生が「難治性網膜硝子体疾患における線維性増殖」で受賞されました。優秀な若い研究者の発表を聞いて、日本の網膜硝子体学会の未来の明るさを感じました。
シンポジウム1では「網膜機能を評価する」と題して堀口正之先生と山本修一先生にオーガナイザーをお願いし、角田和繁先生に「黄斑ジストロフィの眼底自発蛍光」を、三浦雅博先生に「網膜自家蛍光画像の3次元解析」を、岡本史樹先生に「網膜機能をアウトプットで評価する」を、近藤峰生先生に「小型の手持ち式ERG装置を臨床に活かす」をお話しいただきました。OCTによる形態の評価が全盛の現在ですが、機能評価の重要性を感じる内容でした。
シンポジウム2では手術に関して「Basic and Update in Vitreoretinal Surgery」というタイトルで門之園一明先生と林篤志先生のお二人にオーガナイザーをお願いしました。まず林篤志先生に「網膜血管閉塞疾患に対する網膜血管内手術」を、Ramin Tadayoni先生に「Intraretinal and subretinal spaces found with epiretinal membranes: what do they mean?」を、栗山晶治先生に「黄斑円孔網膜剥離に対するmembrane transplantation」を、最後に門之園一明先生に「難治性黄斑円孔の硝子体手術」をお話しいただきました。最後の総合討論には私も参加させていただき、最先端の手術に触れ良い刺激をいただきました。
教育セミナー1では「網膜血流の基礎と臨床」と題して石田晋先生と前野貴俊先生にオーガナイザーをお願いし、野田航介先生、村岡勇貴先生、志村雅彦先生、矢田圭介先生、松本牧子先生に講演していただきました。
教育セミナー2では「見逃すな!黄斑疾患」と題して近藤峰生先生と篠田啓先生にオーガナイザーをお願いし、近藤峰生先生、森隆三郎先生、篠田啓先生、國吉一樹先生にご講演いただきました。シンポジウム、教育セミナーともにたくさんのご参加をいただきましたし、三宅養三先生に観光に行く暇がないくらいに内容が盛りだくさんと言っていただいたのはとても嬉しいお褒めの言葉でした。
応募演題は”過去最多”に匹敵するたくさんの演題をいただきました。
共催セミナーは合計12セッションいただき、どのセミナーも予想を上回る参加者でした。素晴らしい共催セミナーを企画していただき、学会が活性化されました。
また隔年で日本と台湾で開催している日台ジョイントミーティングは英語の発表ということで敷居が高いイメージでしたが、年々質疑応答が活発になり、網膜硝子体学会の国際化が感じられました。22題の発表をいただきましたが、内容が濃く、短く感じられました。
おもてなしコーナーでは長崎名物をたくさんご用意いただきました。知る人ぞ知るブレッドア―エスプレッソのパン、有名な福砂屋のカステラ、九十九島せんべい等々大変好評で、改めて御礼申し上げます。
私の所属は長崎大学医歯薬学総合研究科になりますが、「いしやく」という語呂から豆腐をイメージした「いしやっこちゃん」というゆるキャラを造りました。時々学会場に出没しましたが、たくさんの参加者の方に一緒に写真を撮ってもらっていました。私自身50歳を過ぎた頃から和服に興味を持ち機会があれば和服を着ていました。今回学会2日目の土曜日に和服で参加し、招待講演の座長を和服で勤めました。「いしやっこちゃん」同様、何人かの方と一緒に写真を撮ってもらいました。またその夜の会長招宴では、Tadayoni教授と一緒に紋付袴で参加しました。
たくさんの参加者に満足いただけたのではないかと自負しておりますが、この成功もひとえに皆様のご協力のおかげです。最後になりましたが、皆様のますますのご健勝と、網膜硝子体学会の発展をお祈りして筆を置きたいと思います。