医療機器の生産・輸出・輸入金額動向[1]
薬事工業生産動態統計(厚生労働省)によれば、2020年におけるわが国の医療機器の生産金額は全体で2兆4,263億円である。次図は同統計(年報)が公開されている、直近5か年における生産金額の推移と対2016年比を表している。2020年は126.7%へと拡大したが、前年の134.1%から7.4ポイント後退している。眼科関連機器・製品に限ると、2020年は1,446億円で対2016年比は140.2%であったが、前年からは17.7ポイントの後退となった。上記を前年比で表すと医療機器全体では94.5%、眼科関連機器・製品では88.8%であり、受診抑制などコロナ禍の影響に拠るところが大きいと推察される。なお、本項では薬事工業生産動態統計における眼科関連品目全体について眼科関連機器・製品として集計している。また、2020年の輸出入動向をみると、輸出金額については医療機器全体で9,909億円であり、対2016年比では169.7%と引き続き上回った。眼科関連機器・製品では433億円に留まり、対2016年比では127.7%と上回ったものの、対前年比では85.4%と減少した。なお、医療機器全体における眼科関連機器・製品の占有率は4.4%に留まっている。輸入金額については医療機器全体では2兆6,373億円であり、対2016年比では169.4%であった。これに対し眼科関連機器・製品では2,728億円で、対2016年比112.8%と微増にとどまっていると言えよう。また、医療機器全体における眼科関連機器・製品の占有率は、10.3%であった。生産、輸出入ともに、眼科関連の落ち込みが医療機器全体よりも大きい結果となった。
[1] 薬事工業生産動態統計は2019年から調査方法や報告品目などを変更しているため、それ以前との比較には注意を要するが、本紙における報告態様の一貫性を保持するとの観点から本項の記載は従来の体裁を踏襲している点留意頂きたい。
眼科医療機器生産販売自主統計
日本眼科医療機器協会が実施している眼科医療機器生産販売自主統計(以下、自主統計)によれば、2021年販売実績総額は726.1億円である。次図は直近5か年の推移を表しているが、2020年には新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響などにより637.1億円と前年から14.9%の減少となったが、2021年には依然コロナ禍は続きながらも診療状況の改善に伴い市場規模も対前年比114.0%と反転。また2017年との比較でもほぼ100%近く回復した。
2021年の13大分類眼科医療機器の販売金額構成をみると、「手術治療用器械装置」が29.1%と全体の3分の1近くを占め、引き続きトップに位置しており、これに「眼底検査器械」14.5%、「鋼製小物及び手術用器具」10.9%が続いている。コロナ禍とは言え、白内障手術始め高齢化社会における治療ニーズへの対応という点でこれら上位機器群の中でも「手術治療用器械装置」、「鋼製小物及び手術用具」などは市場での牽引役を担っている。
また、上記の手術用関連の機器・部材に加え、眼底検査機器に含まれている「OCT・SLO」、「画像ファイリング装置・電子カルテシステム」診断等手術向け以外の品目群も引き続き市場での存在感を維持している。
眼内レンズ(国内)出荷推移
日本眼科医療機器協会が実施している眼内レンズ売上枚数自主統計(以下、自主統計)では、2021年販売総枚数は170.9万枚である。軟性素材によるフォールダブルレンズが発売された1997年から2.7倍の規模へと拡大している。眼内レンズ市場の拡大基調としては、高齢者人口の急増(1996年から2021年で1.9倍)を主な要因とし、フォールダブルレンズや挿入器の登場と手術機械の進化、それらを活用する技術の向上により、多くの患者が安全で侵襲の少ない手術を適切な段階で受けられるようになったことも後押しとなった。次図は眼内レンズ販売実績の直近5か年の推移を表しているが、2021年の販売実績は、2017年に対して106.8%と伸びており、コロナ禍や多焦点眼内レンズの先進医療扱いの終了などが影響し大きく落ち込んだ前年に対しても104.9%と増加方向に反転した。
なお、この自主統計は市場の状況に合わせて区分を設定しており、乱視用のトーリック眼内レンズ(単焦点)と、その他の単焦点眼内レンズに分けて集計している。単焦点眼内レンズにおけるトーリック眼内レンズの割合は、2017年以降5.7%、6.2%、7.0%、8.1%、8.6%と増加傾向が続いている。
また、2018年の第3四半期からは多焦点眼内レンズ※を調査対象に加えており、2021年は眼内レンズ全体において6.1%であった。