医療機器の生産・輸出・輸入金額動向[1]
薬事工業生産動態統計(厚生労働省)によれば、2019年におけるわが国の医療機器の生産金額は全体で2兆5,678億円である。次図は同統計(年報)が公開されている直近5か年における生産金額の推移を表しているが、2015年を100.0%としたときに2019年は132.0%へと拡大している。
一方、眼科関連機器・製品の生産金額は、2019年は1,629億円で、2015年と比較すると伸長率は152.4%であった。眼科関連機器・製品の生産増減傾向は、医療機器全体のそれと常に連動するとまでは言い難いが、2019年は眼科関連機器・製品及び医療機器全体共に前年に対しそれぞれ152.4%及び132.0%と大幅に増加しているが。これは2019年10月の消費税増税に伴う駆け込み需要の影響に拠るところが大きいと推察される。なお、本項では薬事工業生産動態統計における眼科関連品目全体について眼科関連機器・製品として集計している。
また、薬事工業生産動態統計における医療機器全体の輸出入動向をみると、2019年の輸出金額は1兆91億円であり、2015年との比較では162.1%と引き続き上回った。眼科関連機器・製品については、2019年の輸出金額は508億円にのぼり、2015年比では150.9%と堅調に増加が続いているが、医療機器の輸出金額全体に占める割合については5.0%に留まっている。
輸入金額については、医療機器全体では2019年で2兆7,230億円であり、2015年比では191.1%と2倍近い水準にある。眼科関連機器・製品も2019年の輸入金額は3,024億円で、2015年に対し128.8%と医療機器全体の傾向に沿った動きをみせている。医療機器全体の輸入金額との比較では、11.1%を占めている。
出所:薬事工業生産動態統計年報(厚生労働省)
[1] 薬事工業生産動態統計は2019年から調査方法や報告品目などを変更しているため、それ以前との比較には注意を要するが、本紙における報告態様の一貫性を保持するとの観点から本項の記載は従来の体裁を踏襲している点留意頂きたい。
眼科医療機器生産販売自主統計
日本眼科医療機器協会が実施している眼科医療機器生産販売自主統計(以下、自主統計)によれば、2020年販売実績総額は637.1億円である。次図は直近5か年の推移を表しているが、2019年には消費税増税に伴う駆け込み需要も手伝って748.2億円とここ5年間で最大の規模まで拡大したが、2020年には新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響などから前年に対して85.1%の水準に留まった。また2016年との比較でも2020年のみ2016年実績を下回ることとなった。
2020年の13大分類眼科医療機器の販売金額構成をみると、「手術治療用器械装置」が24.4%と全体のおよそ4分の1を占めて引き続きトップに位置しており、これに「眼底検査器械」14.9%、「鋼製小物及び手術用器具」11.2%が続いている。いわゆるコロナ禍とは言え、白内障手術始め高齢化社会における治療ニーズへの対応という点でこれら上位機器群の中でも「手術治療用器械装置」、「鋼製小物及び手術用具」などは市場での存在感を維持している。
また、2020年の中分類品目別販売実績をみても、「白内障手術装置・硝子体手術装置及び部材」が大きな割合を占めていて、以下「OCT・SLO」、「画像ファイリング装置・電子カルテシステム」、「鋼製小物その他」、「レーザ手術装置」などが続いており、手術用関連の機器・部材に加え、診断等手術向け以外の品目群も引き続き市場の牽引役を構成している。
なお、一定の販売実績を有する品目で2016~2020年で最も伸長したのは「鋼製小物その他」であった。「OCT・SLO」がこれに続いている。
眼内レンズ(国内)出荷推移
日本眼科医療機器協会が実施している眼内レンズ売上枚数自主統計(以下、自主統計)では、2020年販売総枚数は162.8万枚である。軟性素材によるフォールダブルレンズが発売された1997年から2.53倍の規模へと拡大している。眼内レンズの市場拡大は、基調としては、高齢者人口の急増(1995年から2017年で1.9倍)を主な要因とし、フォールダブルレンズや挿入器の登場と手術機械の進化、それらを活用する技術の向上により、多くの患者が安全で侵襲の少ない手術を適切な段階で受けられるようになったこともそうした傾向を後押ししてきた。次図は眼内レンズ販売実績の直近5か年の推移を表しているが、2020年の販売実績は、2016年に対しては105.1%と増加傾向が続いたが、前年に対しては89.8%と1割強の減少となった。これはいわゆるコロナ禍や多焦点眼内レンズの先進医療扱いの終了などが影響したためと推察される。
なお、この自主統計は市場の状況に合わせて区分を設定しており、乱視用のトーリックレンズ(単焦点)とその他の単焦点レンズに分けて集計している。単焦点レンズにおけるトーリックレンズの割合は、2016年以降5.5%、5.7%、6.2%、7.0%、8.1%と、増加傾向にある。