日本眼科医療機器協会は、1978年に京都で開催された、国際眼科学会の学会併設器械展示会の開催・運営を契機に発足した業界団体です。会員企業は2021年1月現在、133社です。「眼科医療の進歩と健全な発展のため、より優れた眼科医療機器を提供し、国民の目と健康とQOLの向上を図り、社会に貢献すること」を理念に掲げ、16の委員会と部会により様々な活動に取り組んでいます。
2020年は新型コロナウイルスの世界的感染拡大に翻弄された一年でした。人との接触や移動が制限され、多くのイベントが中止またはオンライン開催に切り替えられる中、当協会の事業活動も見直しを余儀なくされました。振り返ってみますと、当初は夏ごろには感染も収束し、元の生活に戻るだろうと期待していました。しかし現実は厳しく、先行き不透明な状況が続いています。予測の難しい世の中となりましたが、コロナ禍が終息し経済が立ち直っても構造的な変化が進み、2019年の姿には戻らないことだけは確かではないでしょうか。協会事務局でもテレワークやWeb会議の活用が一気に進みました。本アニュアルレポートも従来作成していた印刷物を廃止し、今回からデジタルでの配布のみとなりました。協会の理念を堅持しつつ、活動内容や活動方法については、模索しながらも変革を進めてまいりたいと存じます。
コロナ禍の1年を振り返り、活動のいくつかをご紹介させていただきます。
3月の眼科スプリングキャンプ中止に伴い、使用されなかった滅菌ガウンと、会員企業から提供いただいたゴーグルを、日本眼科医会を通じて国際医療センターに7月に寄贈いたしました。有事の際の医療用具の安定供給の重要性について再認識しました。
2020年の展示事業はコロナ禍の影響で第31回日本緑内障眼科学会における展示は中止、第124回日本眼科学会総会と第74回日本臨床眼科学会はWeb展示となりました。唯一11月末に開催された第59回日本網膜硝子体学会が福岡国際会議場とWeb方式でのハイブリッド開催となりました。安全確保第一の運営に配慮された学会の要請により、参加者全員に対し、入館時の「健康状態申告書」の提出、及び新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)登録の確認を実施するとともに、併設展示会場においては、ブース説明員の人数制限、展示会場への入退場方向の規制、展示機器、椅子、テーブルなどのアルコール消毒の徹底、及びサンプル等の配布の禁止、などの対策をした結果、一人の感染者も発生させることなく無事終了することができました。2021年度の学会併設展示会のリアル開催に向けて、一つの方向性が示されたのではないかと考えております。
「眼科MDIR認定制度」は2019年に発足し、164名の受講者の中から126名の認定合格者が誕生しました。しかしながら2020年に予定していた同認定講習会をはじめ、全ての講習会は中止せざるを得ませんでした。幸い、教育事業推進委員会では眼科MDIR認定者の資格更新制度として、「eラーニング」によるカリキュラムを準備してきておりました。初年度の2020年は認定合格者126名の内、92名の更新カリキュラム申し込みがあり、全員が10レッスンに及ぶカリキュラムを無事終えました。2021年以降に予定している講習会は全てこの「eラーニング」方式で開催する予定です。
「次世代医療を目指すICT/人工知能を活用した画像等データベース構築」を日本眼科学会と密接に連携し、進展させて参りました。眼科ICT・AI事業検討委員会の多岐にわたる課題に効果的にあたるため、新たに「規制関連WG」、「技術WG」、「事業検討WG」の3つの Working Groupを設置いたしました。さらに「事業検討WG」では公的眼科検診推進委員会と合同で「AI事業推進WG」を設置しました。2020年1月に当協会として事業母体となる「合同会社G-Data」を設立しましたが、AI解析エンジンの薬事承認の取得、実運用に向けて更に事業推進を加速させて参ります。
本号では、「コロナ特集」として二名の先生方にこの度のご経験と今後の眼科診療の展望についてご寄稿いただきました。日本眼科学会の寺﨑理事長、日本眼科医会の白根会長には紙面をお借りして厚く御礼申し上げます。その他、先述した「眼科MDIR認定制度」をはじめとした教育事業のWeb化の取り組み、協会自主統計についての考察なども掲載いたしております。
本レポートをご一読いただき、私たち日本眼科医療機器協会の活動についてご理解を深めていただければ幸いです。