医療機器の生産・輸出・輸入金額動向
薬事工業生産動態統計(厚生労働省)によれば、2023年におけるわが国の医療機器の生産金額は全体で2兆6,747億円、眼科関連機器・製品は1,890億円である。次図は直近5か年の推移を表しており、全体は2019年比104.2%、前年比103.6%、眼科関連は2019年比116.1%、前年比119.6%であった。
コロナ禍により生産金額は全体、眼科関連ともに2019年から2020年にかけて減少したが、全体では翌年には対2019年101.3%と回復した。全体と比較すると眼科関連は回復に時間を要したが、2023年に対2019年116.1%とコロナ禍前を大きく上回る結果となった。
また、輸出金額は全体で1.1兆円であり、2019年比は139.7%と引き続き上回ると共に、前年比でも102.9%と増加した。眼科関連は709億円であり、2019年比139.0%、前年比119.4%と増加が続いた。ただし、全体に占める割合は6.3%と大きな変化はない。
輸入金額は、全体では3兆3,217億円であり、2019年比122.0%であった。眼科関連は3,482億円で、2019年比は115.8%と全体から大きく乖離している。眼科関連が全体に占める割合は10.5%と、輸出金額のそれを上回っているが、2019年以降の10%~11%を維持した状態が続いている。
眼科医療機器生産販売自主統計
日本眼科医療機器協会が実施している眼科医療機器生産販売自主統計(以下、自主統計)によれば、2024年販売実績総額は886.9億円である。次図は直近5か年の推移を表しており、2021年には新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響からの回復がみられた。診療状況の改善に伴い2022年にはコロナ禍前(2019年)を上回るレベルに回復し、2023年も市場拡大は継続したものの、2024年では微減での推移となった。
2024年の13大分類眼科医療機器の販売金額構成をみると、「手術治療用器械装置」が31.2%と全体の3分の1強を占め、引き続きトップに位置しており、これに「鋼製小物及び手術用器具」14.2%、「眼底検査器械」13.3%が続いている。白内障手術始め高齢化社会における治療ニーズへの対応という点で、コロナ禍を経てなお、これら上位機器群の中でも「手術治療用器械装置」、「鋼製小物及び手術用具」などは市場での存在感を増している。
また、2024年の中分類品目別販売実績をみても、「白内障手術装置・硝子体手術装置及び部材」が大きな割合を占めていて、以下、「OCT・SLO」、「鋼製小物その他」、「レーザ手術装置」などの手術用関連の機器・部材が市場を牽引している。これらに加えて近年では、診断等手術向け以外の品目群である「画像ファイリング装置・電子カルテシステム」も成長を支える要素となっている。
なお、一定の販売実績を有する品目で2020~2024年で伸長したのは「手術治療用器械装置」および「鋼製小物その他」であった。
眼内レンズ(国内)出荷推移
日本眼科医療機器協会眼内レンズ部会が実施している眼内レンズ売上枚数自主統計(以下、自主統計)では、2024年販売総枚数は209万628枚である。高齢者人口の急増(1996年から2023年で約1.9倍)を主な要因とし、軟性素材によるフォールダブルレンズが発売された1997年から3.25倍の規模へと拡大している。また、フォールダブルレンズや挿入器の登場と手術機械の進化、それらを活用する技術の向上により、多くの患者が安全で侵襲の少ない手術を適切な段階で受けられるようになったこともそうした傾向を後押ししてきた。次図は眼内レンズ販売実績の直近5か年の推移を表しており、2020年に対して128.4%とコロナ禍から転じて増加傾向にある。比較可能な2023年時点で回復状況を他の統計と比較すると、眼科医療機器>眼内レンズ>医療機器全体と言うことができる。
なお、この自主統計は市場の状況に合わせて区分を設定しており、乱視用のトーリックレンズ(単焦点)、その他の単焦点レンズ、トーリックレンズ(多焦点)、その他の多焦点レンズ※に分けて集計している。単焦点レンズにおけるトーリックレンズの割合は、2018年以降6.2%、7.0%、8.1%、8.6%、9.4%、10.6%、12.4%と増加傾向が続いている。
また、全体における多焦点レンズの割合は5.1%、多焦点レンズにおけるトーリックレンズ(多焦点)の割合は29.4%であった。
※診療報酬の区分に関わらず、多焦点として国内承認を受けた眼内レンズ。2018年の第3四半期より追加され、2022年第1四半期よりトーリックレンズ(多焦点)とその他の多焦点レンズに細分化された。
※従来、本項目では統計の大部分を占める「水晶体の代用として挿入される眼内レンズ」にのみ言及しておりますが、「トーリックレンズ(単焦点)」及び「その他レンズ(単焦点)」には「屈折異常眼(近視及び近視性乱視)の視力補正を目的とした眼内レンズ」(一般的名称:有水晶体後房レンズ)を含んでおります。